北海道産秋サケの消流状況は、親製品が水揚げ不振による供給過少と内食向け需要の増加で在庫水準は低位だが、安定供給のチリギンとの売り場競合が激化。いくら製品は国産に加え、輸入卵も不漁で供給減から高値に張り付いているものの、今年豊漁予想のロシア・アラスカのマス子が焦点。今期もコロナ禍に伴う消費動向の変化、水揚げ回復時に向けた売り場の堅持が引き続き課題となる。
道総研さけます・内水面水産試験場は6月28日、今年の北海道の秋サケ来遊数予測値を昨年実績比8.5%減の1677万2千尾と発表した。予測通りの場合、平成以降最低。加えて近年の若齢化傾向による平均目廻りの小型化が続けば、沿岸漁獲量は重量ベースで4万トン台前半。3年連続の5万トン割れで、秋サケの生産・加工流通は依然厳しい局面が懸念される。
宮城県産養殖ギンザケは水揚げが日産100トン超ペースになり、間もなく盛漁期に突入する。成育は順調で、1尾3.0キロ上(アップ)も増えてきた。新型コロナウイルスに伴う巣ごもり消費の拡大で冷凍在庫の消化は進み、活発な取引が期待される。活じめブランド「みやぎサーモン」の認知度は年々向上。水揚げは7月中旬ごろまで続く。
北海道沿岸の春定置は序盤主体のサクラマス(本マス)が順調だった一方、主力のトキサケが6月上旬まで低調だ。昨年は5月にまとまった日高が7割減、胆振が半減など各浜とも昨年を大幅に下回るペース。浜値は高値基調だが、補い切れない不振。漁業者は中旬以降のヤマ形成に期待をつないでいる。
水産物卸加工業の株式会社阿部亀商店(宮城県塩竈市、阿部仁社長、電話022・364・3331)は、持続可能性に着目した製品開発に力を入れている。9月に「サステナブル・シーフード」シリーズの第2弾として、チルドの県産養殖ギンザケを使ったレトルトパウチ製品を一般発売する。低炭素社会の実現を目指し、一度も凍結せずに製品化した。世界的な環境意識の高まりを背景に、新たな市場の開拓を狙う。
岩手県の久慈市漁協(皀健一郎組合長)が久慈湾内で試験養殖しているギンザケの3季目の水揚げが27日、始まった。最終試験の位置付けとなる今季は、8月中旬まで約20回にわたり前季実績の5倍となる計200トンの出荷を目指す。成育は順調で、ブランド化に向けた取り組みも進行中。事業化に移行する来季に弾みをつけ、不漁にあえぐ浜に新たな活力を導く。
ノルウェーのプロキシマーシーフード社(ヨアキム・ニールセンCEO)は、静岡県駿東郡小山町に、日本最大級のアトランティックサーモンの閉鎖循環式陸上養殖施設を建設する。4月26日に着工し、2023年6月末竣工予定。初出荷は24年半ばを見込む。年間約6300トン(ラウンドベース)を生産、富士山麓の潤沢な湧水で育てた良質なサーモンとして日本市場に投入する。増産を視野に隣接地の取得も検討している。
昨年まで18年連続でサケ水揚げ日本一を誇っている北海道斜里町。ただ、全国的状況と同様、近年漁獲量は減少傾向で、資源の底上げ・安定を目指し、自然産卵できる河川環境を復活させるプロジェクトに乗り出している。その資金調達と周知・PRで、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディング(CF)を開始した。目標額は300万円。7月15日まで寄付を受け付けている。
札幌市の食料品卸・株式会社エスワイエスウイング(依光博文社長)は3月中旬に札幌市豊平区に食のセレクトショップ「らうすプラス」を構えた。干物やサケをメインとした水産品に、全国各地から取り寄せる名物商品を“共演”。併せて羅臼町認証店として羅臼昆布など特産品を取りそろえ、道都・札幌市民の魚食拡大に臨んでいる。
来遊資源の低迷が続く秋サケ。気候変動による海面水温の上昇などの影響が指摘される中、道総研は温暖化のシナリオに基づき、サケ稚魚の降海時期の沿岸水温の将来変化を予測した。併せて放流適期への影響を分析。北海道沿岸全域で適水温の開始時期、終了時期とも早まることが分かった。適水温期間は特にオホーツク、根室で短くなり、サケ稚魚の生残にマイナスの影響をもたらす可能性が示唆された。